ストリーミング全盛時代のCD:物理メディアはなぜ生き残っているのか
Spotifyが日本でサービスを開始した2016年以降、日本でもストリーミング消費が急拡大した。CDシングルの年間販売枚数は2000年代のピーク時から大幅に減少し、「CD時代の終わり」が語られるようになった。しかし2024年現在、日本のCDセールスは世界と比べて依然として高い水準を保っている。なぜ日本でCDは生き残り続けるのか。
アイドル産業とCDの共依存関係
日本でCDが売れる最大の理由のひとつは、「握手会・投票権・特典」とCDの束ね売りだ。AKB48が確立したこのモデルにより、ファンは「音楽を聴きたい」からではなく「特典を得るために」CDを複数枚購入する行動が定着した。これにより日本のシングルチャートは「実際の音楽人気」よりも「ファンダム規模と購買意欲」を反映する傾向がある。
ジャニーズ系グループや坂道系グループのCDも同様の構造を持ち、これらのグループが日本のCDセールスを高い水準で維持する主要因となっている。
CDとストリーミングの「評価される作品の違い」
CDで売れる作品とストリーミングで再生される作品は、必ずしも一致しない。CDセールスは「既存ファンの結束力」を反映しやすいのに対し、ストリーミングは「一般リスナーへの楽曲そのものの訴求力」を反映する。この乖離が、日本の音楽市場を語る際に生じる混乱の一因だ。Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」はストリーミングで驚異的な再生数を記録したが、CDとしての販売枚数はアイドル系グループには及ばないという例が典型的だ。
レコードの復活という逆張りトレンド
CDが縮小傾向にある一方で、アナログレコードの需要は世界的に回復している。日本でもレコードプレーヤーの出荷数が増加し、「音質」と「所有の喜び」を重視するオーディオファン・コレクターの間でレコードへの回帰が起きている。米津玄師・YOASOBI・Vaundyなどの人気アーティストがレコード盤をリリースするケースも増え、レコードは「聴くメディア」から「インテリアとしても楽しむコレクタブル」へとその意味を変えつつある。
CDの今後と「物理メディアの価値」
ストリーミングが完全に普及した未来でも、CDやレコードが「完全に消滅する」可能性は低いと多くの音楽業界人は見ている。デジタルデータに比べて「手に取れる実体がある」という体験の価値は、デジタルネイティブ世代の若者の間でも再評価されつつある。アーティストのライブ会場限定CD、ファンクラブ限定盤、美麗な装丁の限定盤など、「特別な体験・コレクタブルとしてのCD」は今後も一定の需要を持ち続けるだろう。