テレビCMが映す時代の鏡
テレビコマーシャルは商品を売るだけでなく、その時代の価値観・流行・社会状況を映す鏡だ。1960年代の高度経済成長期から2020年代のデジタルシフトまで、CMに起用される芸能人と表現手法の変化を追うことで、日本社会の変遷が見えてくる。
1980〜1990年代:バブルとトレンディドラマの時代
バブル経済期のCMは豪華さと憧れを全面に出したものが多かった。「NO.1になりたくて…」「なんでも解決、大丈夫だよ!」のような前向きなコピーと、当時のトップスターが組み合わさる形式が主流だった。ソフトドリンク・化粧品・自動車のCMに起用された俳優・歌手たちは、そのCMがキャリアの象徴となった。宮沢りえのサントリーCM、牧瀬里穂のJR東海「クリスマス・エクスプレス」は今も語り継がれる名作だ。
2000年代:タレント価値とCM好感度の連動
CM好感度ランキング(CM総合研究所)が注目を集めるようになり、「CM好感度1位タレント」の市場価値が急上昇する時代になった。長澤まさみ・上戸彩・北川景子など若手女優のCM起用が加速し、特定のブランドと長期契約を結ぶ「CM女王」の地位が芸能界で確立された。
2010年代:ジャニーズとAKBの二極化
この時代はジャニーズ事務所とAKB48グループがCM市場を牽引した。嵐・SMAP・KinKi Kidsなどのグループが複数のブランドと同時に契約し、テレビCMの芸能人市場はジャニーズ・AKB体制が確立された。一方でアジア市場を意識したCMでは韓国・台湾での知名度も考慮されるようになった。
2020年代:多様性とインクルーシビティ
コロナ禍以降のCMトレンドとして「多様性の表現」が急速に広がった。LGBTQを意識したカップルの描写、様々な体型・外見の人々の登場、障害者・高齢者が自然に含まれる映像など、以前はなかった表現が増加している。資生堂・P&G・ユニリーバなどグローバルブランドが率先してこのトレンドをリードし、日本の国内ブランドも追随する形で変化が広がっている。
YouTubeとSNS広告の台頭
テレビCM予算が減少する中、YouTube広告・Instagram広告・TikTok広告への投資が増加している。「15秒で伝えなければスキップされる」という制約が生んだ新しいCM表現は、従来の30秒・1分CMとは異なるアプローチを求めている。インフルエンサーとのコラボレーション広告はテレビCMとは異なるアプローチで若い世代にリーチしており、芸能人のCM起用の概念自体が変化している。