エンタメのドキュメンタリーが「内側」を暴く時代

かつてドキュメンタリーは社会問題・政治・自然を扱うジャンルというイメージが強かった。しかし2015年以降、Netflix・Huluなどの配信プラットフォームが参入したことで、芸能・音楽・スポーツの「内側」を描くドキュメンタリーが急増し、エンタメファンが楽しめるドキュメンタリーというジャンルが確立された。

①「BTS: Burn the Stage」(2018年)

K-POPグループBTSの世界ツアーの舞台裏を追ったドキュメンタリー。グループ間の葛藤・疲弊・喜びをリアルに描き、BTSファン(ARMY)のみならず音楽業界関係者にも衝撃を与えた。YouTube Premium→映画館公開→配信という多段階展開も画期的だった。

②「Miss Americana」(テイラー・スウィフト、2020年)

テイラー・スウィフトが自身のキャリアの挫折・成長・政治的覚醒を語ったドキュメンタリー。「完璧なアイドルイメージ」の裏にある苦悩を赤裸々に語り、世界的な反響を呼んだ。スターのパブリックイメージ維持の苦労を描いた作品として高く評価される。

③「jeen-yuhs:カニエ・ウェスト三部作」(2022年)

カニエ・ウェストの無名時代から世界的スターになるまでの過程を約20年分の映像で追ったNetflixドキュメンタリー。音楽への情熱・野心・精神的苦闘が混在した作品で、Hip-Hop音楽史の一次資料としても価値が高い。

④「ゴットファーザーを超えろ」(コッポラのリメイク挑戦)

映画制作の舞台裏を追ったドキュメンタリー形式の作品も人気で、プロデューサー・監督・俳優の創作過程を描いた作品群は映画ファンから高い支持を受けている。

⑤「GAGA: FIVE FOOT TWO」(2017年)

レディー・ガガが慢性疼痛(線維筋痛症)を抱えながらスーパーボウルのハーフタイムショーに向けて準備する過程を密着撮影。エンタメの頂点に立つアーティストの「もろさ」を描き、ファンとの感情的なつながりを深めた。

⑥日本のアーティストドキュメンタリー

日本では宮崎駿・スタジオジブリのドキュメンタリー「夢と狂気の王国」(2013年、砂田麻美監督)が話題を呼んだ。また「人生フルーツ」(2017年)など、著名人ではなく普通の人々の生き方を追ったドキュメンタリーも評価が高く、劇場上映でロングランを記録している。

⑦配信プラットフォームが変えたドキュメンタリー消費

Netflixが「The Last Dance」(マイケル・ジョーダン&シカゴ・ブルズ)でスポーツドキュメンタリーの新境地を開いて以降、芸能・スポーツ・社会事件の詳細なドキュメンタリーシリーズが世界規模で消費されるようになった。日本でもYouTubeドキュメンタリー形式の芸能コンテンツが増加しており、従来のワイドショー的情報とは異なる「深掘りコンテンツ」への需要が高まっている。