芸人のドラマ主演が珍しくなくなった時代

かつてはコメディアンがシリアスなドラマ主演を担うことは稀であり、「笑いの人と演技の人は別」という業界の暗黙の区分けがあった。しかし2010年代以降、この境界線は急速に溶けている。お笑い芸人出身の俳優がアカデミー賞・日本アカデミー賞などで演技部門の賞を受賞するケースが増え、「芸人の演技力」が正式に評価される時代になった。

草彅剛:SMAPからの飛び出し、そして演技派の確立

SMAP解散後に独立した草彅剛は、舞台・映画・ドラマでの本格的な演技活動に注力している。「ミッドナイトスワン」(2020年)でのトランスジェンダー女性役は映画賞を席巻し、草彅の演技力への評価を決定的なものにした。「正欲」(2023年)などでも圧倒的な存在感を見せ、「芸人出身の最高の演技派俳優」として確立されている。

バカリズム:脚本家としても活躍する知性派

バカリズムは俳優として多くのドラマ・映画に出演するだけでなく、脚本家として「架空OL日記」「ブラッシュアップライフ」「時効警察はじめました」などの作品を手がけている。芸人の観察力と言語化能力が脚本の「ひねった設定」に活かされており、「お笑い芸人が書いたドラマ」という新ジャンルを開拓した。

ムロツヨシ:脇から主役へ

長年「名脇役」として知られたムロツヨシは、40代になってから主演作品が増加した。「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「わたし、定時で帰ります。」など、コミカルと真剣の境界を巧みに行き来する演技で唯一無二のポジションを確立している。「芸人的なボケの間を演技に活かす」スタイルは俳優業との相性の良さを示している。

なぜ芸人は演技が上手いのか

業界関係者の分析では「芸人はステージで自己を見つめる訓練が積まれているため、カメラ前でも自然な振る舞いができる」という指摘がある。また「ボケ・ツッコミという対人コミュニケーションの訓練が、ドラマの二者間のやり取り(アドリブ力)に活きる」とも言われる。笑いのタイミングを計るセンスは、演技の「間」の習得にも通じる技術だ。